アメリカ医療事情

アメリカで救急車を呼ぶ:その①

実は私、アメリカ留学中に2回救急車を呼んだことがあります。

今回は、そのpart 1です。

ちなみに、アメリカで救急車を呼ぶには、911に電話をかけます。「コール、ナインワンワン」。これが合言葉です。

急変時って意外に番号が思い出せなかったりしますよね。しっかり覚えておいてください。911です。

救急車 Part I

小麦アレルギーの息子

私の長男は小麦アレルギーがあります。離乳食を開始した時、パンを食べさせたら顔がパンパンに腫れ上がった、結構マジのアレルギーです。以来、小麦は完全に遮断、アメリカでもグルテンフリーで生活していました。

アメリカは小麦社会です。しかし(だからこそ?)、小麦アレルギーに対してのサポートは非常に整っています。大体のレストランには小麦アレルギー用のメニューが置いてありますし、スーパーでもグルテンフリーコーナーというものがあります。小麦アレルギーという点においては、日本よりも数段暮らしやすい国でした。

ある休日の朝

いつものようにグルテンフリーのパンを当時1歳半の息子に食べさせていたところ、が始まり、急に不機嫌になりました。寒い夜だったので、風邪をひいたのかな、と思い、取り敢えず食事は終わりにして洗面所に連れて行きました。

そこで聞いたあの音、、、

ヒュー、ヒュー、ヒュー

一気に寒気が走りました。急いで食べたパンのパッケージを見てみると、そこには「グルテンあり」の文字が。

小麦アレルギー持ちが、パンを食べ、その最中からの喘鳴。。。。これは、、、アナフィラキシー(注:アレルギーの最重症型で、命に関わる状態)ではないか!

一刻の猶予もありません。すぐに911に電話をかけました。

やり取りは日本とそんなに変わりませんでした。年齢や状況を説明、住所を伝えるだけです。数分後、救急車と救急隊員2人がやってきました(といっても、消防車みたいな車でしたが)。

エピネフリン

状況を説明すると、すぐに彼らはわかってくれました。

「アナフィラキシーだね。エピネフリン(注:緊急の蘇生薬)を投与しよう!」

「どのくらいかな。0.3mgかな。」

まだ1歳半の息子にその量は多いだろ、と思い、

That’s too much

と言いましたが、救急隊員が、見ず知らずの一般外国人の意見に耳を傾けるはずがありません

That’s fine

の一言で押し通されました。一刻も早くエピネフリンを投与して欲しかった私は、投与が遅れて死ぬことはあっても、その量を投与して死ぬことはないだろうと思い、それ以上何も言いませんでした(言えませんでした)。

病院に着くと

救急車で10-15分程度走り、救急病院に到着しました。そこでやった事は

経過観察のみ。

エピネフリンを投与した今、もうするべきことはないと判断したのでしょう。

驚きでしたね。日本では、アナフィラキシーに限らず、救急車で来たそれなりの重症患者は、ほぼ全例で採血し、静脈路を確保します。アナフィラキシー反応は二峰性にくることがあるため、病院によっては一泊入院が原則になります。

しかし、そこはさすがアメリカ無駄なこと、お金がかかることは、可能な限り省きます静脈ラインもとらず、採血もせず。症状が落ち着いたため、2-3時間経過観察しただけで帰宅となりました。

帰り道

迎えに来てもらうため、家で待機していた妻に電話をかけると

「車が動かない」

何ですって??

寒さのせいか、バッテリーが上がってしまったらしいのです。何というタイミングの悪さ。

救急車に乗って病院に行ったため、帰る手段がありません。オハイオの田舎にある救急病院だったので、周囲に何もありません

救急車で10-15分の距離か。もう歩くしかない!30分か?1時間か?2時間か??

決心した私は、病院のWifiで病院から家までの地図を写真に収め、息子を抱えて歩き始めました。

当時貧乏生活でお金を切り詰めて生活していたため、携帯電話もインターネットが使えない電話のみの契約でした。

ですので、GPSを使ったナビなども使用不可でした。

今思えば、なんて無謀なんでしょう。1歳半といえども、10kg以上ある息子を抱えて数時間歩こうだなんて、阿呆としか言いようがありません。

20分ほど歩き、病院も見えなければ他の建物も見えなくなりただひたすら田舎道を歩いている私。昼間ではありましたが、だんだんと不安になってきました。本当に帰れるのだろうか。

しかし、そんな阿呆な私を見かねたのか、神様が助け舟を出してくれました。

一台の救急車(消防車)が通り過ぎたかと思えば、急に停止しました。

Hey!  お前、家に帰るのか??

見ると、救急隊員が救急車から顔を出して叫んでいます。そうです。さっき運んでもらった救急車です。

だったら乗せてってやるよ。俺らも今から帰るから、お前ん家寄ってやるよ」

アメリカ人、ばんざーい!!涙が出るほど嬉しかったのを覚えています。

日本では考えられませんよね。こんな事をした日には、私的な使用だの何だのと、大問題になりかねません。

いろいろあれど、人一人の命を救ってもらった、ありがたい経験でした。

感想

医療についてですが、コストや効率を重視したアメリカでは、日本の常識が通用しません。アナフィラキシーという重症に、採血もラインもとらず、数時間で帰宅という、日本の医療では考えられないものでしたが、考えようによってはこのような方法もアリなんだな、とも思わせる経験でした。

そして何よりもアメリカ人の人間性。アメリカは確かに差別が存在しますし、私も少なからず嫌な思いをしたことがあります。一方で、日本では考えられないような優しさに出会える国でもあります。

日本人が、マナーのような丁寧な優しさを持っているのに対し、アメリカ人は雑ですが心の底からの優しさとおおらかさを持っている、そんな印象です。

ちなみに

後日請求書が届きました。

救急車使用+救急外来受診で、数十万円の請求でした。みなさん、海外保険には絶対に入っておきましょう。

ABOUT ME
木村聡
福岡県の研修病院で初期研修修了後、大学に入局。米国オハイオ州に臨床研究で留学するも、知識の欠如を痛感。ハーバード公衆衛生大学院に進学し、MPHを取得。マサチューセッツ工科大学メンバーとの共同研究などに関与。 日本では麻酔・集中治療医として働き、オーストラリアでは小児集中治療を一から学び直しています。 乗り越える壁を見つけ続けることは、なかなか簡単ではありませんよね。アラフォー目前、様々な壁にぶち当たり、それなりに多くの経験をしてきました。私の挑戦や経験・知識、失敗談などが、他の誰かの刺激になり、役に立つことを切に願っています。 プロフィールをもっと詳しく見る

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