以下、右室二腔症(Double-chambered double ventricle: DCRV)の周術期管理に際し、麻酔科医・集中治療医が把握すべき事項について解説します。
解剖・分類
右室二腔症(Double-chambered double ventricle: DCRV)は、右室が近位側の高圧chamberと遠位側の低圧chamberの二腔に分かれる疾患である。右室の心尖部では、多数の筋束(肉柱:trabeculations)が交差する。その一つがmoderator bandと呼ばれ、中隔と心室壁を繋いで心室腔を横切る形で存在する4)。右室内では、異常な筋束や”moderator band”と呼ばれる肉柱の肥大によって、圧較差が生じる2)。
DCRVは先天性心疾患の0.5-2.0%に発生すると言われており、約90%で心室中隔欠損症を合併する3)。その他にも、大動脈下狭窄、肺動脈弁狭窄、両大血管右室起始症、Fallot四徴症、肺静脈還流異常症、大血管転位、純型肺動脈閉鎖症、Ebstein奇形も合併しうる3)。
DCRVは先天性心疾患の一つではあるが、後天性に発生することもある。例えば心室中隔欠損症の患者では右左短絡による右室流出路内の血流・圧の増加が、室上稜(supraventricularis)の肥大を引き起こし、徐々に右室内の狭窄が進展することが報告されている1,3)。
病態生理
筋束より近位部の右室圧は上昇し、遠位側(流出路側)の圧は正常範囲内である。心室中隔欠損は遠位側に開口するが、サイズが小さいことが多く、左右シャント量は多くない。その場合、肺動脈圧も高くない。
方針
狭窄部の前後の圧較差が40mmHg以上である場合や、心不全兆候を認める場合には手術適応となる2)。心室中隔欠損を閉鎖し、異常筋束を切除する。
中隔縁柱やmoderator bandには房室伝導路が通っているため、術後に房室ブロックを呈することがある2)。
チェック項目
心エコーでは、
- 異常筋束部での狭窄の評価:>=40mmgで手術適応
- 心室中隔欠損の有無・サイズ・シャント方向:DCRVの90%で合併
- その他の心疾患
を評価する。
References
- Anesthesia for Congenital Heart Disease, 3rd Edition. Dean B. Andropoulos et al.
- Loukas M, et al. Cardiovasc Pathol. 2013 Nov-Dec;22(6):417-23. PMID: 23701985.
- Hoffman P, et al. Heart. 2004 Jul;90(7):789-93. PMID: 15201250.
- Joy M.H. Wang, et al. Translational Research in Anatomy, Volume 17, 2019.100049, ISSN 2214-854X. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2214854X19300482.
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