その他HSPH関連

ハーバード公衆衛生大学院のプログラムの選び方

HSPHを受験しようとした際、そのfield of studyをどこにしようか迷うことがあるかもしれません。実際、私が属していたClinical Effectiveness (CLE)とQuantitative Methods (QM)は非常に似通っており、他のprogramの人からは「あなた達のプログラム、どこが違うの?」と良く言われていました。今回は、HSPHの受験を考えており、臨床研究に必要な疫学や統計に興味がある人が、どのprogramを選ぶべきか、ということを焦点に書いていきたいと思います。

候補となる3つのprogram

まず初めに、HSPHの特徴として授業の選択がかなり自由であることが特徴としてあげられます。したがって、必修教科以外は何をとっても構いません。そのため、programは違えど同じような授業を受講しているケースはよく見受けられます

それでも、program自体が似ているものがあります。私が思うに、臨床研究に必要な疫学や医療統計学を中心に学びたい人が考えるべきprogramとしては、1. Clinical Effectiveness (CLE), 2. Quantitative Methods (QM), 3. Epidemiology (EPI)が挙げられると思います。

CLEを中心に、それぞれの特徴を述べたいと思います。

1. Clinical Effectiveness

ある程度社会人として働いていなければ受験できないprogramです。臨床を経験した後、臨床研究の知識を深めようとするMDが受験することが多いようです。なので私もこのprogramを受験しました。入学後、予想外のことが多かったので書き記します。

アメリカで働いている医師がほとんど

生徒の8~9割は、アメリカのレジデントまたはフェローでした。そしてその多くが、MGHやBrigham and Women’s Hospitalで働いていました。したがって、年齢層も20歳代後半から30歳代前半が多いです。アメリカで激しい競争に勝ち抜いて医師になった人たちなので、ディスカッションのレベルは高いです。

多くがpart time student

HPSHには、full time studentとpart time studentがいます。full time studentは本校で学ぶことが主なので、一学期に12.5単位以上幾ら授業をとっても構いません。そして12.5単位は必ずとらなければなりません。一方、part time studentは自分の仕事を持ちつつ並行して学校にも来ている生徒です。一学期に12.5単位以上は取得できず、仕事の合間に授業に来ています。

前述の通り、近くの病院でレジデントやフェローをしているため、必然的にpart timeで勉強しています。夏期にがっつり単位を取得し、それ以外のtermは少しだけ参加する程度であまりキャンパスに顔を出しません。

そしてこれは私の印象ですが、彼らのようなMDをしながらpart timeで勉強している人と、full timeで学んでいる人では最終的には結構知識に差が出るように思います。

働きながらpart timeでとれる授業には限り(仕事とのtime-conflict)がありますし、そもそもアメリカのMDは疫学者や統計学者とコラボして研究をするので、自分でわざわざ全てを行う必要がありません。そのため、目指すレベルもfull timeで疫学や統計を学んでいる人よりも低い印象があります。

裏を返せば、CLEの学生は(公衆衛生より)MDに重きを置いており、今後もMDとして働く人が多いようです。

主に夏しか来ない

CLEは夏からの入学を勧められるため、私も夏より現地の医師達と一緒に過ごしました。しかし、夏が終わって秋になってびっくり。CLEの学生がほとんどいなくなったのです。その理由は、彼らがpart time studentで、我々日本人+αのみがfull timeだったからでした。

こういった点(ネイティブの医師、年齢層がやや高め、part timeがほとんど、夏しかこない)で、CLEは(Global heals, Health managementなども含め)他の全てのprogramとは少し違った構成になっています。

2. Quantitative Methods

前述の通り、他の生徒からCLEとの違いを聞かれるほど、似ているprogramです。生徒達の興味も似ていますし、授業も同じような授業を選択することが多いです。

違いを挙げるのであれば、QMは秋入学がほとんどですので、同じ45単位をとるにしても期間が短いこと、社会経験がないと受験資格がないこと、CLEよりも年齢層が若いこと、海外からfull timeで来ている生徒(ネイティブではなくインターナショナル)が多いこと、でしょうか。Full timeなのでpartよりも深く学べます。なぜか日本のMDはよくCLEを選んでいますが、(アメリカ・カナダ以外の)international MDはQMを選ぶことが多いように思います。

ということで、QMの学生は、たとえbackgroundがMDであったとしても、今後はどちらかというと疫学や統計といった学問を中心に活躍していきたい学生が多いように思います。

 

3. Epidemiology

CLEやQMは45単位(1年コース)しかありませんが、EPIは45単位と60単位(1年半〜2年コース)があります。CLEやQMも疫学を学びますが、より疫学が好きな人が選ぶように思います。統計が数字やデータ解析や手法を学ぶのが主であるのに対し、疫学はその解析結果をどのように解釈するかを考える学問です。数字の論理よりも言葉の論理を好み、意外に統計が好きな人よりも「細かい」人が多いように思います。

一方、秋入学、年齢層がCLEよりも若いこと、full time studentが大多数のことなどは、QMと同様です。

まとめ

どのコースを選ぼうが、HSPHの授業は自由選択制のため、同様の授業編成となることが多い3つのprogramを紹介しました。一言でまとめるのであれば、

疫学や統計を学んで臨床研究の一般的な知識を深めたいMDならCLE、MDよりも踏み込んで(疫学や)データ解析をやりたいならQM、臨床より疫学の方が好きな人(今後MDへは戻らないだろう人)ならEPI

といった具合に考えたら良いのではないでしょうか。

ABOUT ME
木村聡
福岡県の研修病院で初期研修修了後、大学に入局。米国オハイオ州に臨床研究で留学するも、知識の欠如を痛感。ハーバード公衆衛生大学院に進学し、MPHを取得。マサチューセッツ工科大学メンバーとの共同研究などに関与。 日本では麻酔・集中治療医として働き、オーストラリアでは小児集中治療を一から学び直しています。 乗り越える壁を見つけ続けることは、なかなか簡単ではありませんよね。アラフォー目前、様々な壁にぶち当たり、それなりに多くの経験をしてきました。私の挑戦や経験・知識、失敗談などが、他の誰かの刺激になり、役に立つことを切に願っています。 プロフィールをもっと詳しく見る

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  1. […] またどこかで説明しますが、公衆衛生学といってもその内訳は様々です。HSPHもその例外ではありません。ただ、私的には「discussionで何かを作り上げていく」programと、「座学中心の」programに大別されると思っています。 […]

  2. […] 対象とする生徒は、degreeでいうCLEと同じような方々で、疫学や統計に興味があるclinicianやresident, fellow, facultyです。世界中から臨床研究に興味があるphysician(特にアメリカとカナダが多い)が集まっていました。 […]

  3. […] ちなみに、今回はClinical Effectiveness (CLE)という、臨床医を対象とした疫学・統計を中心としたコースで、full-time studentを1年間することで45単位取得し修士課程を終了する場合を念頭にします。プログラムやpart-time studentに関しては、それぞれの記事を参考にしてください。 […]

  4. […] ただし、こちらでも記事にしていますが、HSPHではクラスの選択が非常にフレキシブルですので、プログラムが違ってもほぼ同じクラスを選択することも可能です。 […]

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