海外大学院における成績評価

よく昔から、

「日本の学校は入学が難しいが、卒業は簡単」

「アメリカでは、入学は簡単だが、在籍中の成績が厳しく評価されるため卒業が難しい」

と言われていますよね。一概には言えないと思いますが、アメリカ大学院の受講形式や成績評価方法は複雑です。私も初めは意味がわかりませんでした。今回は、ハーバード公衆衛生学大学院(HSPH)の、受講・成績の評価方法について解説したいと思います。

目次

成績評価方法

HSPHのホームページには、Grading Systemとして以下のような記載があります。

Grading Option   Grade Definition   Grade Point Average  
Ordinal   A – C, F Grading Scale   Calculated in Final G.P.A.  
Pass/Fail   P = Pass, F = Fail   P Not Calculated in G.P.A., F Calculated in G.P.A.  
Audit (Special Fellows)  Not Graded   Not Calculated in G.P.A.  

Ordinal

この”Ordinal”は”Letter”とも呼ばれ、いわゆる普通の成績評価です。Aが最も良く(A+やA-といった細分化もあります)、C以上で合格、Fは不合格です。

Fなんてないだろうと思われるかもしれませんが、講義によっては普通にFとなる生徒もいます。あんなに厳しい宿題とテストをこなして不合格とは、アメリカの大学院はなんて厳しいんだと思いました。

C以上の合格であれば問題なし、ではありません。書いてあるように、Ordinalでとった講義の成績はGPAという最終成績に計算されます。BやCではGPAが下がってしまうため、単位は取れて卒業もできてもGPAが低い、といった状況があり得ます。

GPAは博士課程の合否や就職にも関わります。興味のある講義だからといって、非常に採点の厳しい講義をordinalで受けた場合、合格はしたもののGPAが低くなる可能性があります。博士課程やアメリカでの就職を考えている生徒にとって、どの講義をordinalで取得するか、非常に大切な問題です。

Pass/Fail

Pass/Failという評価方法が存在します。Passすれば、ordinalと同じ単位数を得ることができます。Ordinalとの大きな違いは、GPAの計算にカウントされないということです。そのため、上記のようにGPAに気を使わなければならない生徒や、必修教科のため受講が義務であるものの興味のない講義であった場合は、このPass/Failという評価方法を選ぶことになります。

気をつけたいのは、Pass/Failで受講することができる講義数に限度があるということです。例えば、全てPass/Failでは卒業できないということです。当たり前ですね。

Audit

Auditとは、「その講義から単位を取らないが受講したい場合」に使います。これは注意が必要です。私も友達も、Auditの本当に意味を勘違いしていました。

アメリカの教師は、どんな形であれ授業に参加することを強く望んでいます。それは、たとえauditであったとしても同じです。どういうこ事かと申しますと、auditで受講している生徒も宿題や試験をこなさなければならない(!)という事です。

私はauditとは唯の「聴講者」だと思っていました。なので、ある講義の資料が欲しかったためをauditとして受講したものの、宿題など一切提出しませんでした。

そして帰ってきた成績表には、”WDA”の文字が。。これ、「何もしてないから評価できない」という印です。GPAには換算されませんが、成績表にはしっかりと「こいつは何もしてない」ということが残ってしまいました。

いわゆる唯の聴講者は、”Guest“と呼ばれます。授業は聞きたい、資料も欲しい、でも成績表には記載しないで欲しい、という人は、教師に直接お願いすることで、”guest”として参加することが(講義によっては)可能になります。

ちなみに、HSPHの成績は以下のように記載されています。

A =  4.00 (Excellent)  F  =  0.00 (Failing/ordinal) 
A-  =  3.70  WD*  =  Withdrawn 
B+  =  3.30 (Good)  P*  =  Passing 
B  =  3.00  F  =  Failing (pass/fail) 
B-  =  2.70 (Satisfactory)  IN*  =  Incomplete (pending completion of work) 
C+  =  2.30  INC*  =  Permanent Incomplete 
C  =  2.00 (Poor)  ABS*  =  Absent from Exam 
C-  =  1.70  IP*  =  In Progress 
AU*  =  Audit  WDA*  =  Withdrawn Auditor 

 

以上を踏まえ、まずは興味のある講義を体験受講

HSPHの特徴の一つに、数え切れないほどある講義の中から、自分の好きな講義を選択し受講する、という点があります。(必修教科の単位にあわせ)自分のプログラム卒業に必要な単位数さえ獲得できれば、卒業できます。

学期が始まると、最初の約2週間は体験受講の期間です。自分の興味のある講義に実際に出席し、本当に受講したいかどうか、そして上記のどのような形の成績評価にして欲しいのかを考えます。興味があるけどGPAは低くしたくない、採点が厳しそう、必修教科で取らざるを得ない、といった場合にPass/Failを使う、といった感じです。

決めたら最後、やり抜くのみ

2週間を過ぎると、基本的には成績評価方法を変更することはできません。もちろん、受講すると決めた講義をやめることもできません。どんなに興味がなくなっても、どんなに負担が多くても、あとはやり抜くしかありません。

アメリカの大学院にまつわる噂は本当か

上記のように「アメリカでは、入学は簡単だが、在籍中の成績が厳しく評価されるため卒業が難しい」とよく噂されます。本当でしょうか。

入学については、このブログの他の記事を参考にしてください。ただ、「簡単」とまではいかないかもしれませんが、(特にHSPHは)日本人であればそこまで難しくないと思います。多様性を大切にする大学ですので、年々海外志向の減っている日本人は稀有な存在であり、女性ともなれば非常に合格しやすいようです(←女性のHSPH在校生や卒業生、すみません。悪い意味ではないので気分を害さないようにお願いします)。

成績については、上記の通り非常に複雑ですし、負担が多い講義が多いのは事実です。時に出席のみで単位がもらえることがある日本の大学とは、とても大きな差があります。ただし、講義によって得た知識の量は、本当に半端ないです。

卒業はどうでしょうか。たしかに個々の講義でFailとなる学生はいますが、皆さん卒業に必要な単位よりも多めに受講することが多いようです。ですので、卒業できなかった学生は(少なくとも日本人では)聞いたことがありません。

おわりに

アメリカ大学院の成績評価方法について解説しました。特に初めはこのような仕組みが分からず、戸惑いました。ぜひ活用していただければ幸いです。

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