MSとMPHの違い

近年、医師の間でも人気のあるMPH (Master of Public Health)ですが、いざ内容を調べてみると、MS (Master of Science)というdegreeと殆ど同じ、どっちを選べばいいの?と感じた方は多いのではないでしょうか。その違い、なかなか理解しづらいですよね。

そんな方のために、今回はMSとMPHの違いについて解説したいと思います。

目次

一般的に

Master of Science (MS)

アカデミック

一般的には、MSは”academic” degreeと考えられています。すなわち、公衆衛生のある特定の分野を、「学問」として捉え、その学問を研究することが主な目的です。そのため、卒業後は博士課程(PhD: doctorate)に進むことも多く、そこまで見据えた人が来る学位でもあります。

例えば、医師(MD)というバックグラウンドを持っているものの、今後は疫学者などで活躍したい人、などですね。

記事「MPHの使い道」を参照して頂きたいのですが、特にアメリカでは修士(master)と博士(PhD)では「格」が違います。逆に言えば、その分野を極めるためにPhDを取得し学問として追求したい人が、まずはMSに進む、と考えることもできます。

より深く追求

MSの場合は、MPHよりも学びたい領域をより明確にし、追求することが求められます。疫学にしろ、統計にしろ、選択した領域をより深く学ぶ必要があります。そのため“MS in Epidemiology”, “MS in Biostatistics”のように、学びたい領域が明確に決まっています。

Master of Public Health (MPH)

プロフェッショナル

MSが”academic”なdegreeであるのに対し、MPHは”professional” degreeと考えられています。 基本的には、何かしら他の専門職を持っており、現場で働いている人が対象となります。卒業後は取得したdegreeを生かして、よりその専門職として現場で活躍することを目的としています。

例えば、臨床研究に興味があるMDが、今後も臨床医として働きつつ、疫学や統計を学ぶことで今後の活躍の場を広げたい人などが選びます。

浅く広く

基本的には、公衆衛生の分野を浅く広く学ぶことを前提とします。しかし、人によっては特定の分野を深く学ぶこともあります。そのため、”MPH in Epidemiology”といったprogramも存在し、MSとの違いがより分かりにくくなってしまっています。

つまり

簡単に言えば、MSは「学者」になりたい人、MPHは現場で活躍したいpractitionerのための学位、と考えても良いかもしれません。

※もちろん、MPHからPhDに進み、疫学者として活躍している日本人も沢山いらっしゃいますので、上記はあくまで目安です。

ちなみに、学校によってはMSの方が学位取得に時間がかかることもあるようですが、HSPHのようにMSであってもMPHであっても1年(45単位)か2年(65単位)を選べる学校もありますので、学校それぞれかと思います。

ハーバード公衆衛生大学院の場合

私はハーバード公衆衛生大学院(HSPH)しか知らないので、HSPHを例に説明させてください。

HSPHの特徴として、授業選択のフレキシブルさが挙げられます。どういう事かと申し上げますと、それぞれの学位取得に必要な「必修科目」が存在しますが、それさえ取得していれば、あとはどの授業を選択しても構わない、ということです。そして、その「必修科目」は卒業に必要な全単位のごく一部に過ぎない、または何かしらの他の授業で代替可能であることから、どのdegreeに属していても、多くのクラスを自由に選択できることになります。

例えば、私と同じ年に入学した日本人で、MSのepidemiologyで入学した医師がいました。かたや私は、MPHのClinical Effectivenessという臨床研究にも関わりたい医師向けのprogramに在籍していました。

上記の例ですと、彼は疫学を学問として勉強したい疫学者、私は現場で働き続けたい医師、という様に考えられると思います。しかし、彼と私で勉強したい内容が近く、1年を通して選んだ授業はかなり重なっていたと思います。この意味では、HSPHにおいてはMSとMPHに(少なくともキャンパスでは)大きな違いはありません。

しかし、卒業後、彼は今もボストンで研究をガンガンしていますし、私は臨床医として働いています。そう言った意味では、方向性や考え方として、MSとMPHの違いは上記の説明で適切ではないかと思います。

まとめ

今回は、MSとMPHの違いについてまとめました。受験の際、参考にしていただければ幸いです。

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