麻酔テクニシャンの実態

皆さんは、麻酔テクニシャン(anesthetic technician)という職業をご存知でしょうか。

以前、麻酔看護師について記事にしたことがありますが、麻酔看護師は麻酔科医に代わって麻酔を実際におこなう看護師のことです。一方、麻酔テクニシャンは、麻酔といった医療行為を行うことはできません。しかし、海外の手術室の運営においては、大きな役割を担っています。

今回は、オーストラリアの手術室で活躍する麻酔テクニシャンの実態について解説してみたいと思います。

目次

麻酔テクニシャンの仕事内容

麻酔器やモニターの準備

麻酔器の始業点検、除細動器の確認、モニターの準備など、麻酔開始前に全て麻酔テクニシャンがやってくれます。また、点滴や圧ラインの作成までも、彼らの仕事です。ただし、麻酔薬や血管作動薬といった薬剤については、麻酔科医が自ら準備しなければなりません。

挿管の準備・挿管介助

挿管チューブや喉頭鏡といった機材の準備も麻酔テクニシャンの仕事です。そのため、年齢によるサイズの違いやラリンジアルマスクやブジーといった気道管理に関連した器具に関しても熟知している必要があります。

また、挿管時の介助も看護師ではなく麻酔テクニシャンの仕事です(注:ただし、集中治療室では挿管介助は看護師がしてくれます)。挿管時の緊張した空気の中、麻酔科医と呼吸を合わせて器具を渡し、挿管困難時も的確に素早く物品を取り出さなければならないため、かなりストレスがかかる仕事だと思います。

ライン挿入介助

静脈ラインや動脈ライン、中心静脈ラインの挿入に関しても、麻酔テクニシャンが準備してくれます。針や物品の準備、超音波のセットアップ、挿入後のテープ固定といった介助も、看護師ではなく麻酔テクニシャンがやってくれます。

患者搬送

病棟や麻酔前室から手術室へ搬送する場合や、術後回復室や集中治療室に搬送する際、麻酔科医とともに麻酔テクニシャンが付き添います。といいますのも、移動時の心電図や酸素飽和度、動脈圧測定といったモニターの準備や接続などは全て麻酔テクニシャンの仕事だからです。ちなみに、患者搬送にも手術室の看護師は関与しません。

手術室の看護師

日本の手術室の看護師は、挿管やラインの介助、患者搬送を手伝うことが多いと思います。しかし、これらの仕事は全て(少なくとも私の病院では)麻酔テクニシャンが代わりにおこなってくれます。そのため、私は勤務初めの頃、麻酔テクニシャンのことを看護師と勘違いしていました。

そして、当の看護師は麻酔導入中・麻酔覚醒時には何も手伝いません。手術看護師の仕事は、主に術中の器械出しとそれを助ける外回りの仕事です。手術器材の準備が終われば手術が始まるまでは適当に音楽を流し会話を楽しんでいますし、手術が終われば麻酔中であっても部屋から出ていってしまうこともあります(笑)。

また、手術室看護師は術前術後の患者搬送にも関与しないため、必然的に病棟看護師から手術室看護師へ、または手術室看護師から病棟看護師への引き継ぎもありません。例えば集中治療室に搬送後の引き継ぎについても、麻酔科医が代表して集中治療室の医師と看護師に引き継ぎを行うのみです。

麻酔テクニシャンの資格

上記の仕事内容からわかるように、麻酔テクニシャンには医学や麻酔に関するある程度の知識が求められます。そのため、それに特化した教育を受け資格を得る必要があります

オーストラリアの場合は、麻酔テクノロジー分野における“VET (Vocational Education and Training)”というプログラムを修了し、その証明(certification)を得ることで麻酔テクニシャンとして働く資格を得ることができます。

麻酔テクニシャンはしっかりとしたトレーニングを修了し資格をもった人達ですので、彼らのプライドもそれなりに高いです。

例えば、患者入室時や搬送時にモニターの装着などを手伝おうとすると、「それは私がやるから他の事をしなさい」と注意されたりもします。

感想

同じ「麻酔科医をサポートする」職業であっても、実際に麻酔業務を行う麻酔看護師とは異なり、麻酔テクニシャンは医療行為自体を行いません。そのため、日本でこのシステムを導入した場合に麻酔科医の仕事や負担を軽減するかと言われれば、(麻酔看護師を導入した場合と比べて)そこまで大きくは変わらないでしょう。

しかし、麻酔テクニシャンが行なっている仕事の多くは、日本では手術場の看護師が看護業務と兼ねて行っていることが殆どです。そのため、日本でこのシステムを導入した場合には、看護師の負担は軽減することになると思います。看護師の数が足りなくて手術室が回せない、手術室の看護師の職場満足度が低い、といった場合には、これが解決策の一つになるのかもしれません。

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