小児心臓麻酔〜各論〜

小児の挿管チューブ

はじめに

成人では、リークによる換気不全や誤嚥を防ぐ目的で、カフ付きの気管内チューブ(通称「挿管チューブ」)が標準である。

8歳未満の乳幼児における最も狭い気管部位は輪状軟骨のレベルと言われているが、楕円形をしているため、「適切な」サイズの気管内チューブであってもリークによる換気や気管粘膜に過度の圧がかかる可能性がある。そのため、古いタイプの気管内チューブは粘膜を傷害し正門下狭窄を引き起こす危険があり、新生児ではカフなしの気管内チューブが使用されてきた

近年、低い圧で気道をしっかりと密閉できる”low-pressure high-volume”のカフ付き気管内チューブが開発された。Micro-cuffと呼ばれるこれらのカフ付き気管内チューブを使用することの安全性が謳われ、手術室、PICU、そしてNICUでも広く使用されてきている。

経口 vs. 経鼻挿管

手術中の挿管のみであれば、経口挿管で問題ないことが殆どである。しかし、術後や集中治療室での長期の挿管人工呼吸器管理となると、気管内チューブの固定のことを考えなければならない。

経口挿管では、気管内チューブをテープで頬に固定することが一般的であるが、小児では皮膚の弾力性が高く、鎮静中であっても首を左右に振ることによって気管内チューブの位置が変化してしまう。特に新生児や乳児では少しのズレが抜管や片肺挿管に繋がってしまうため、経口挿管はそれらのリスクとなってしまう。

上記のような経口挿管のデメリットがあるため、施設によっては長期間の人工呼吸器管理が予想される患者では、経鼻挿管を選択することも多い。

サイズ

一般的には、カフ付き気管内チューブを選択する際、

  • 外径が若干太い
  • deflateした状態でもカフ周囲に厚みがある

といった理由から、カフなしチューブよりもワンサイズ小さなチューブを選択することが多い。しかし、内径の小さなチューブを選択することで、気道抵抗の上昇、分泌物の貯留、気管内吸引の有効性低下といったデメリットがある。

位置

カフの位置が高いと声帯を傷つけてしまい、低すぎると片肺挿管となってしまう。理想的には、カフによる声門下粘膜傷害を防ぐためにも、カフが輪状軟骨よりも下のレベルに位置するのが望ましい。

以下に、小児における気管内チューブのサイズと固定位置の目安について、表にして示す(文献2を元に改変

ちなみに以下の径(mm)は、内径であり、外径ではない。

上記はあくまでも目安で、必ず胸部レントゲン検査で位置を確認し、先端がT2椎体レベルにあることを確認する。

それぞれの製品で、気管内チューブの位置をガイドする線(マーカー)の位置、カフの形状や大きさ、murphy孔の有無に違いがあるため、注意が必要である。例えば、micro-cuffではmurphy孔がなくカフとチューブ先端の距離が短いため、マーカーを目安にすると上記の目安よりも浅くなりがちである。

ちなみに、Mallinckrodtにカフ付きチューブがあるが、カフが大きいため、輪状軟骨レベルにかからないようにするには深めに留置することになる。

カフ圧

通常、カフ圧は15cmH2Oで十分であり、20cmH2Oを超えるべきではない。20cmH2O以上でもリークがある場合は、サイズが小さすぎるのでサイズアップを考慮する。逆に、deflateした状態でもリークがない場合は、カフなしチューブよりも損傷のリスクが高く、チューブの変更が必要である。

HFOVやHFJVといった換気様式でgas-trappingが問題となる状況では、リークのない気管内チューブは肺傷害の危険を増加させる可能性がある。そのため、カフなしチューブ、またはカフ付きチューブのカフをdeflateすることを考慮する。ただし、過度な陰圧はシワにより逆に粘膜損傷のリスクを上げる可能性があるため注意が必要である。

 

先天性心疾患の目次へ

References

  1. The Royal Children’s Hospital. Cuffed ETT management in NICU
  2. The Royal Children’s Hospital. PICU guideline.
  3. Bhardwaj N. Pediatric cuffed endotracheal tubes. J Anaesthesiol Clin Pharmacol. 2013 Jan;29(1):13-8. PMID: 23492803.
ABOUT ME
木村聡
福岡県の研修病院で初期研修修了後、大学に入局。米国オハイオ州に臨床研究で留学するも、知識の欠如を痛感。ハーバード公衆衛生大学院に進学し、MPHを取得。マサチューセッツ工科大学メンバーとの共同研究などに関与。 日本で麻酔・集中治療医として働いた後、オーストラリアで臨床留学も経験。 乗り越える壁を見つけ続けることは、なかなか簡単ではありませんよね。アラフォー目前、様々な壁にぶち当たり、それなりに多くの経験をしてきました。私の挑戦や経験・知識、失敗談などが、他の誰かの刺激になり、役に立つことを切に願っています。 プロフィールをもっと詳しく見る

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です