以下、QT延長症候群(Long QT syndrome: LQTS)の管理に関し、麻酔科医・集中治療医が把握すべき事項について解説します。
原因
QT延長症候群とは、その名の通り心電図上のQT間隔が延長し、torsades de pointes (TdP)やVT、VF、徐脈性不整脈を引き起こす疾患群である。
先天性と後天性の両方がある。QT延長症候群と関連する先天性の疾患は、Romano-Ward syndromeやJervell and Lange-Nielsen syndromeが挙げられる。
後天性としては、電解質異常(低カリウム血症、低カルシウム血症、低マグネシウム血症)や、様々な薬剤、神経・内分泌異常がQT延長との関連が報告されている1)。
QT延長を引き起こす薬剤については、こちらのサイトがとても良くできているので参考にすると良い。
ちなみに、集中治療領域で用いる薬剤の中でQTを延長させる薬剤の例を挙げると
- 麻酔薬:propofol (KR), sevoflurane (KR), dexmedetomidine (PR), haloperidol (KR)
- 制吐薬:diphenhydramine (CR), ondansetron (KR), metoclopramide (CR), promethazine (PR)
- 制酸薬:omeprazole (CR), pantoprazole (CR)
- 抗生剤:metronidazole (CR), fluconazole (KR)
- 抗不整脈薬:amiodarone (KR), procainamide (KR), flecainide (KR)
- 血管作動薬:nicardipine (PR), sotalol (KR), isoproterenol (SR)
- 利尿薬:furosemide (CR), hydrochlorothiazide (CR)
※Abbleviations: KR, Known Risk; PR, Possible Risk; CR, Conditional Risk; SR, Special Risk
診断
先天性の疾患には遺伝子検査を行うこともあるが、治療は変わらない。
QT間隔の絶対値は心拍数によって変化してしまうので、臨床的な診断としては補正QT間隔(corrected QT interval: QTc)を用いる。Bazett’sの公式では、
Corrected QT = measured QT interval / √(RR interval)
年齢に関わらず、QTc > 0.47 secであれば「延長」と考える1)。
管理
Prophylaxis
交感神経系は頻脈系不整脈(VT, VF)を引き起こすため、不安や疼痛を取り除くことは大切である。術前であればミダゾラムのプレメディケーションが有効である。また、同様の理由により、β遮断薬は有効である1)。
低カリウム血症、低カルシウム血症、低マグネシウム血症といった電解質異常は術前に補正しておく。喉頭展開や挿管の前のリドカインの静注が有効であったとの報告もある(18547294)。また、麻酔覚醒時には、交感神経系が優位になるので注意が必要である。
Treatment for TdP
Torsades de pointesが続く場合は電気的除細動の適応となるが、断続的なTdPに対してはマグネシウムとリドカインを使用する1)。前述のように、QT延長を引き起こすアミオダロンやプロカインアミドは相対禁忌である1)。
References
- Anesthesia for Congenital Heart Disease, 3rd Edition. Dean B. Andropoulos et al.
コメント
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