採用までの道のり

オーストラリアに臨床留学をする方法

現在、私はオーストラリアのRoyal Children’s Hospital (RCH)という病院のPediatric Intensive Care Unite (PICU)に臨床留学をしております。そのお陰(?)なのか、最近オーストラリアに医師として臨床留学をする為にはどうしたら良いのかと質問されることが多くなりました。 他人に対して偉そうに道を照らすことはできないのですが、せめて私の経験と感じたことをシェアしたいと思います。

コネの重要性

私自身のケース

アメリカ同様、オーストラリアでもコネは非常に重要です。事実、私はコネで採用されました。どういった経緯だったのか、少し具体的に説明いたしましょう。

私が日本で所属していた大学病院の医局は、昔からRCHのPICUにtraineeを送り出していました。今では日本で小児心臓麻酔領域のドンとなった某先生が、当医局から初めてRCHに留学したのが25年ほど前のことです。以来、この医局はコンスタントに留学生を送り出してきました

※特に昔はIELTSといった英語の試験は不要であったため、双方が同意さえすれば留学できるという状況でした。

私もいつからか小児心臓麻酔グループに入っていましたので、上にならってRCHへの留学を考えるようになりました。そしてある日、RCHへ留学経験のある上司に相談すると、その場ですぐにRCHのPICUのトップに連絡してくれました。そこで返ってきたメールが

お前が推薦するなら、とるよ

でした。コネの強さを痛感した瞬間です。見学もしていませんし、面接も受けていません。すぐに秘書から連絡が来て、いつからのポジションが空いているのか、英語の試験をクリアしていないならいつまでにクリアすれば間に合うかなど、色々と教えていただきました。そして、後々、何とかIELTSで目標のスコアをクリアしたことをメールで伝えたところ、「Congratulation!」というメールとともに採用が決定しました。

コネの意味

このようなコネで採用された人間は、私だけではないようです。他の同僚の中にも、面接なしで採用された人間が少なからずいました。もちろん、直接インタビューを受けて採用された同僚もいますが、彼らが皆「コネ」を全く使っていない訳ではありません。

と言いますのも、面接を受けた人も受けていない人も、応募した時点でRCHからそれぞれの応募者の上司に何らかの連絡が入っているケースが多いんですね。要するに、どのような人物かをこっそり調べているというわけです。医師の世界など狭い世界です。悪い噂などすぐに広まります。採用するに値する人物であるかは、これまでの働き方や他人からの評価も大事ということなのでしょう。ネイティブにしても外国人にしても、それぞれの上司に対して可能な範囲で聞き取り調査が行われているようです。彼らが「素晴らしい医師だよ」と言えば採用される可能性が高まるため、これも広義の「コネ」に含まれるといって良いでしょう。

コネは大事ですが、コネを作るにはそれ相応の努力と時間が必要です。初めて会った人を推薦することなんてありません。私の場合も、何年間も一緒に働き「私」という人物をさらけ出した結果、幸いにも同医局の先生方から推薦してもらえたのだと思っています。もしコネで留学したい人は、その分野で留学した医師が在籍する組織で一緒に働くことが王道なのかもしれません。

ちなみに、私が所属していた医局では留学経験がないとスタッフにはなれませんので、助教以上は基本的に全員留学経験があります。RCHのPICUだけでもこれまで5人もの医師が留学しています。将来的には留学を考えていて、とりあえずの国内での進路で悩んでいる人は、こういった視点で就職先を選ぶのも良いかもしれませんね。

日本人びいき?

もちろん組織によって異なるとは思いますが、RCHのPICUは日本人びいきです。私の所属大学だけではなく、様々な日本の施設から日本人がRCHに留学しています。これは、これまでに働いてきた日本人のお陰と考えて間違いないでしょう。私はアメリカやオーストラリアで現地の医師や研究者と話してきましたが、日本人の噂は大概良いものです。英語というビハインドはほぼ全員が口にするものの、それを挽回するだけの「何か」があるらしいのです。

実際、現在のPICUには私を含め3人も日本人がいますし、こちらに来て「日本人ならまず採用審査に落ちない」という噂も聞きました。オリエンテーション初日にコンサルタントから「あなた日本人でしょ?なら大丈夫。I love Japansese!!」と言われましたし、日本人が臨床で良い働きをした際、周囲に向かって「見たか!?だから俺らは日本人を採用するんだ!」と声高に叫んでいるコンサルタントもいました(笑)。

コネに頼らない方法

もちろん、自分で道を切り開く方法もあります。実際に病院見学を行い、自分をアピールする方法です。私はしていないので偉そうに語れませんが、有効な方法の一つと言えるでしょう。

こちらに来て感じるのは、オーストラリアはアジアだということです。容姿はアメリカ人と似ていますが、物事の考え方は断然アジア人といいますか、日本人にも近いものがあります。つまり、アメリカほど生産性や利を強く追及していませんし、実績よりも人間性を大事にすることだって多々あります。日本のマッチングを経験した医師であれば、見学の回数や人間性が時に成績や実績よりも評価されるという事実は、なんとなく理解できるのではないでしょうか。

英語は必要

以前に記事にしていますが、オーストラリアで臨床医として働くには英語の試験が必須です。オーストラリアで医師の登録を管理している団体が決めたこと(「オーストラリアで臨床医として登録される方法」参照)なので、残念ながらこれだけはどうしようもありません。

どの程度の英語力が必要なのか、どのような試験を受ければ良いのかについては、記事「オーストラリアへ臨床留学するために必要な英語力」を参照してください。

最後に

こちらで医師として活躍している日本人との会話の中で、「オーストラリアの臨床留学は難しくない」というフレーズをよく耳にします。実際、私自身もそう感じています。確かに英語の試験は簡単ではありませんが、逆に言えば、それさえクリアしてしまえば留学できる可能性がグンと高まります。あとは見学するなりコネを作るだけです。私のように、(組織によっては)日本の病院で働いているだけでコネが形成されることだってあります。そういった意味では、欧米諸国と比べると「狙い目」なのかもしれません。臨床留学に興味のある人は、ぜひトライしてみてはいかがでしょうか。

ABOUT ME
木村聡
福岡県の研修病院で初期研修修了後、大学に入局。米国オハイオ州に臨床研究で留学するも、知識の欠如を痛感。ハーバード公衆衛生大学院に進学し、MPHを取得。マサチューセッツ工科大学メンバーとの共同研究などに関与。 日本では麻酔・集中治療医として働き、オーストラリアでは小児集中治療を一から学び直しています。 乗り越える壁を見つけ続けることは、なかなか簡単ではありませんよね。アラフォー目前、様々な壁にぶち当たり、それなりに多くの経験をしてきました。私の挑戦や経験・知識、失敗談などが、他の誰かの刺激になり、役に立つことを切に願っています。 プロフィールをもっと詳しく見る

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