オーストラリアの臨床医登録システム

人生、一度でいいから海外で臨床をしてみたい、と思っている医師は意外に多いのではないでしょうか。今回は、(日本を含め)海外の医師がオーストラリアで臨床医として登録されるまでの道筋について、解説したいと思います。

アメリカと異なり、オーストラリアで単に臨床をするだけなら、必ずしもオーストラリアの医師国家試験を受ける必要はありません。しかし、以下に説明するどのpathwayからどのregistrationであろうが、IMGsは”English Language Skills Registration Standard”といって、必ずある程度の英語能力があることを示さなければなりません詳細はこちらをご覧ください。

目次

目標はregistration

オーストラリアで医療行為をするためには、Medical Board of Australiaという団体から認められなければなりません。そして、その許可といいますか、登録されることを”registration“と呼びます。

Registrationには、

  • General registration:オーストラリアで医師となる通常のコース
  • Specialist registration:専門医として登録
  • Provisional registration:一定期間のsupervised practiceが必要で、修了後にgeneral registrationを目指すコース
  • Limited registration:期間限定でトレーニングを受ける海外の医師
  • Non-Practicing registration:その他

といった種類があります。沢山あっていろいろややこしいですが、いずれにせよオーストラリアで医療行為をするためには、この”registration”を目指さなければなりません。

Registrationのための道

そして、オーストラリアとニュージーランド以外の医学部卒(International Medical Graduates: IMGs)が(上記いずれかの)registrationを得るまでの道(pathway)として、

  • Competent Authority pathway
  • Standard pathway
  • Specialist pathway
  • (Short term training in a medical specialty pathway)

の3(+1)つのpathwayが存在します。

1. Competent Authority pathway

基本的には、general registrationを目指すIMGsが通るpathwayです。指定された試験(イギリス(PLAB)、カナダ(LMCC)、アメリカ(USMLE)、ニュージーランド(NZREX)、アイルランド)に合格したIMGsが対象となります。

2. Standard pathway

Competent Authority pathwayやSpecialist pathwayの資格のないIMGsが(provisional registrationまたはlimited registrationを介して)general registrationを目指す際のpathwayとなります。オーストラリアの筆記試験と臨床試験(AMC examinations)、またはassessment program(workplace-based assessment)をパスする必要があります。

3. Specialist pathway

海外で既に専門的なトレーニングまで修了しているIMGsを対象としたpathwayです。オーストラリアの専門団体が、果たして自分たちの国の専門性に見合うものかどうか判断し、registration type(Limited registration/Provisional registration/Specialist registration)を決定します。

例えば、私の同僚の一人は、イギリスで專門医を取得した後、オーストラリアにSpecialist pathwayで留学していました。

これは、オーストラリアの病院でsupervisor付きで1年間臨床医として働き、最後に学会から派遣された評価者による口頭試問を受けなければなりません。同時に、別の評価者がその病院のスタッフから本人の「評判」を聞き出し、最終的にオーストラリアで専門医として働くに値する人物かどうかを判断します。合格すれば、オーストラリアでの正規の専門医試験とトレーニングが免除され、晴れてオーストラリアの専門医と認定されます。

自国で専門医を既に取得し、オーストラリアで医師として長期間働きたいという人は、このpathwayを使うのも一手でしょう。

(4. Short term training in a medical specialty pathway)

海外で既に専門的なトレーニングまで修了しているIMGsの中で、短期間(通常は2年以内)のより専門的なトレーニングをオーストラリアで行いたい人が対象となります。専門的なトレーニングを受けるためのポジションが既に確約されていることが条件になります。

※このpathwayは、基本的にはオーストラリアでずっと専門医として働くためのregistrationとはならないため、それらを目指す人はspecialist pathwayからのregistrationを目指すことになります。

私の場合は、日本で麻酔指導医・集中治療専門医であり、オーストラリアで小児集中治療を短期間学びたい、というスタンスでした。そのため、”Short term training in a medical specialty pathway“から”limited registration“という流れになりました。

Self assessment check to determine which pathway to apply for – for IMGs wishing to practise medicine in Australia

IMGsがregistrationに至るには、上記の中のどのpathwayに申請すべきなのかをflow chart形式で表した図が、Medical Board of Australiaのホームページに掲載してあります。参考にしてください。

まとめ

いろいろなregistrationやpathwayがあり、複雑ですよね。ただ、上記のルールや取り決めはかなり曖昧な印象を受けました。おそらく、英語さえクリアすれば幾らでも臨床医として登録される方法がある、ということの裏返しだと思います。

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • […] 以前に記事にしていますが、オーストラリアで臨床医として働くには英語の試験が必須です。オーストラリアで医師の登録を管理している団体が決めたこと(「オーストラリアで臨床医として登録される方法」参照)なので、残念ながらこれだけはどうしようもありません。 […]

  • はじめまして。
    日本で勤務中の医師のものです。
    ホームページいつも参考にさせて頂いています。
    一つお聞きしたいのですが、

    1. Competent Authority pathway

    基本的には、general registrationを目指すIMGsが通るpathwayです。指定された試験(イギリス(PLAB)、カナダ(LMCC)、アメリカ(USMLE)、ニュージーランド(NZREX)、アイルランド)に合格したIMGsが対象となります。

    とのことですことが、
    日本の医学部卒のECFMG certificate持ちであれば、オーストラリアのフェロー等は他のテストなしで可能なのでしょうか?

    先生ご自身は、ECFMGもちながら、IELTS も7.0取得したとのことですが、
    もし情報お知りであれば教えて頂ければ幸いです。

    • ご質問ありがとうございます。

      私はcompetent Authority pathwayではないため正確なことは申し上げられませんが、ホームページ上はUSMLEはapproved competent authorityとあります。しかし、IMGである以上、どのpathwayで行くにしても、英語の試験はクリアしなければならない、というのが私の理解です。

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