HSPH受験対策

自己推薦文(personal statement)の書き方と例:その②

以前、海外の大学院入試などに必要なpersonal statement(statement of purpose)の書き方について解説いたしました。それでも、なかなか良い自己推薦文なんて思いつかない人も居ると思います。

私も自己推薦文には苦労しました。学生時代より「中の中」のような普通の生活を送り、社会人になってからは真面目には働きましたが、人様に自慢するような「業績」や「著名な仕事」をした訳ではありませんでした。そのため、奨学金の申請やpersonal statementといった「自分をアピール」する必要があるものに対し、どのように準備・対応して良いのか全くわかりませんでした。

でもご安心ください。Personal statement(PS)は、自慢できるような大したことをしていなくても、十分に印象深い文章を作る事ができます。私が用いた実際のPSも紹介しながら、その書き方を考えてみましょう。

印象に残る自己推薦文

印象に残るPSを書く簡単な方法は、

  1. 自己体験談に基づいて
  2. どう考え、どう行動し
  3. なぜ今回の志願に至り
  4. 将来はどうなりたいのか

を書き記すことです。

1. 自分の思考や行動に影響を与えた自己体験談

他人とちょっと違う自己体験談はありませんか?「他人とは違う経験、何も無い、、、」と感じる人もいるかもしれません。しかし、上司に怒られた経験、患者を亡くした経験、奇抜なバイト経験、悔しい思いをした体験、、、なんでも良いので、探してみてください。

(悲しいことに、嫌な体験や苦しい経験ほど、その後の思考・行動変化に繋がる事が多いのかもしれませんね。。。)

2. 体験談がどのように影響を与えたのか

論理の組み立て

次に、その経験を元に、何を学んだのか、どのように考えるようになったのかを整理します。何気なく思った事も、こうやって言語化すると、意外に難しいことがわかります。

「Aという体験によって、Bと考えるようになった」 i.e. 「A→B」

たったこれだけの論理ですが、文章・言語化することは簡単ではありません。いざ考え出すと、その矢印の論理が穴だらけであることに気づきます。

なぜそう考えるに至ったか、自分に対しても説明できないことが、他人に説明できる訳がありません。自分の納得のいく論理を組み立てましょう。

実際の行動の変化

そしてもし可能であれば、ここで思考の変化だけでなく、行動変容に関しても記載できたらよりインパクト大です。

例えば、私はある出来事がきっかけで海外に興味を持つようになりました(”USMLEを勉強しようと思うまで“参照)。しかし、英語は非常に苦手でした。それでも、「どうしても臨床留学したい。そのためにはとりあえず米国に渡り、現地で英語も学ぼう」と考えた訳です。それが最初のアメリカ留学でした。研究留学でしたが、その主な仕事は企業主体の臨床研究の同意を取得しデータを集めることでした。無給でしたので貯金は減る一方、研究の成果は殆どありませんでしたし、差別も受けました。それでも、毎日実際の患者に研究の説明をし、日本人と触れ合うことの殆どない留学生活のお陰で、英検3級を落ちるような英語力であった私ですが、USMLEのStep 2 CSをクリアしECFMG certificationを得る事ができました。

このような一連の流れでも

  • 経験:海外で活躍している日本人に刺激を受け、
  • 思考:より視野の広い臨床医を目指すことを考え、
  • 行動:日本での安定した生活を捨て、アメリカに飛び込み、苦しい思いをしながら無給で働き学んだ。

とすれば、それなりのインパクトになると思います。

3. なぜ今回のPSを書くに至っているのか

上記の事項が、なぜ今回の志願(MPHであれば、なぜそれを学びたいと思ったのか)に繋がったのかを考えましょう。こちらも上と同様です。意外に、Bという思考(またはCという行動の結果、)なぜ入学志願に至ったのかのstoryを組み立てるのは、なかなか容易なことではありません。しっかり時間をかけて考えてください。

4. どのような将来像を思い描いているのか

最後は、どのような人物になりたいのか、どのような将来像を描いているのかを書きます。目の前のことをコツコツこなすことも重要ですが、10年後、20年後の姿も見据えていなければなりません。この経験が長期的にはどのように影響するのか、その将来像のためにはなぜ今回の留学が必要なのかを書きましょう。

どのような将来像が望ましいのかは、それぞれの学校や奨学金支給団体によって異なります(←奨学金に関してはこちらを参照してください)。例えば、ハーバード公衆衛生大学院は、そこに留まるのではなく、世界各地で活躍してくれる人物を欲しがっています。一方で、それぞれの組織や特定の地域に貢献してくれる人物を欲しがる組織もあるでしょう。この点は、ある程度サーチングが必要です。

Personal statementの例

最後に、私が実際に書いたPSを元に、簡単な例を挙げてみます。

以下をテンプレートにするのではなく(といっても、真似るほどでもありませんが。。)、独自のstatementを考えてくださいね(その人にしかかけない文章」参照)

公開してしまった時点で、私も含め誰も同じ文章は使えません

例①

例えば、私は幼少期にアトピー性皮膚炎を患っていました。かなり重症であり、下着は血と浸出液でベットリ汚れ、関節を曲げるのも大変でした。それが医師を志すキッカケでもあった訳ですが、それを基にpersonal statementを書くとします。以下は、私の実際のPSの一部です。

① 体験談

As a child I was diagnosed with serious atopic dermatitis. When I woke up in the mornings, my pillow was dirty with exudative fluid and blood from my face, and my undershirt clung to my body. My eyebrows fell out, and I could not move my neck. I had also severe asthma attacks, which sometimes limited my ability to play with other kids and live a normal life. It was these experiences that influenced my decision to become a doctor and to treat and improve patients’ lives. 

これだけでいろんな方向に持っていけそうですが、「疫学や統計を学びたい」という方向に持っていくのであれば、

② 思考変容 → ③ 志願理由

I was always wondering why I had the disease, what conditions predisposed me to develop it, and how many others kids’ lives were affected with this condition. 

Clinical research is a valuable complementary tool which can provide answers to some unsolved questions formulated in the daily clinical practice. 

Epidemiology and statistics are indispensable parts of clinical research. 

と書けるかもしれません。

例②

私は組織運営にも興味があり、MBAの取得を考えていた時期もありました。その場合、アメリカへの研究留学を元にPSを書くのであれば、

In order to expand my research experience, I did a clinical research fellowship for one year in the United States. Throughout this experience, I noticed several differences between the U.S. and Japan in the research field.

One of these differences is…

などと違いを幾つか述べた上で、「日本のように個々の能力と根性に依存する医療ではなく、アメリカのようにシステムとしてのアプローチが必要。そのためにマネージメントを学びたい」、などと言って書き進める事ができそうです。

参考:なぜ自己アピールが下手なのか

私たち日本人は、自己アピールが苦手ですよね。私もその一人です。海外で外国人の同僚と話をしていると、何故こんなにも自己推薦力が違うのだろうと未だに感じています。何故でしょうか。

私たち日本人は、自己主張する事を良しとした教育を受けていません。

  1. まず、自分の意見よりも先に他人の意見を聞く。
  2. 相手がどのように考えているのかを推測する。
  3. 自分が発言することで、相手がどのように感じるかを推し量る。
  4. その上で、相手を傷つけないように発言する。

こんなプロセスを踏むこと「美」として教え込まれた我々には、まず率先して発言し自己主張する教育を受けた欧米人とは、そのアピール力に雲泥の差があります。

勿論、我々の教育が劣っていると言っている訳ではありません。このような教育の賜物なのか、我々日本人には、「空気を読む」という、外見・振る舞い・雰囲気を読み取り言葉の裏を読むという、他の人種は持ち合わせていない驚くべき能力が鍛え上げられています。

そうは言っても、海外に進出するのであれば、郷に従わなければなりません。Personal statementもその一つです。私たちが受けた教育に感謝しつつ、海外では印象に残る自己推薦状を書かなければなりません。

さいごに

今回は、personal statementの中で、自然に自己アピールする方法(の一つ)をお伝えしました。普段の生活の場で、面と向かって自己アピールすることは我々日本人には簡単なことではありません。しかし、文書であれば、随分とその敷居は低くなります。自己アピールが上手な人が必ずしも人として優れているとは思いませんが、それができないとチャンスを掴めないことがあるのも事実です。自己推薦文の書き方がわからない人は、上記を参考にしてチャレンジしては如何でしょうか。

ABOUT ME
木村聡
福岡県の研修病院で初期研修修了後、大学に入局。米国オハイオ州に臨床研究で留学するも、知識の欠如を痛感。ハーバード公衆衛生大学院に進学し、MPHを取得。マサチューセッツ工科大学メンバーとの共同研究などに関与。 日本では麻酔・集中治療医として働き、オーストラリアでは小児集中治療を一から学び直しています。 乗り越える壁を見つけ続けることは、なかなか簡単ではありませんよね。アラフォー目前、様々な壁にぶち当たり、それなりに多くの経験をしてきました。私の挑戦や経験・知識、失敗談などが、他の誰かの刺激になり、役に立つことを切に願っています。 プロフィールをもっと詳しく見る

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です